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とんスポ

181号:東北学生トライアスロン選手権

2016 年 8月 15日 発行

〜七ヶ浜を振り返る〜

 「七ヶ浜」、先輩たちは次々とその言葉を口にする。伊達トライアスロン七ヶ浜大会は、東北学生選手権も兼ねた大会、すなわちインカレに行けるかどうかが決まる予選大会である。「防波堤を超えたら波が高くなる」、「バイクコースはアップダウンが激しい」など、先輩たちはすでに、七ヶ浜の特徴を心得ている。そんな過酷なレースを果たして自分は乗り切れるのだろうかと、私は内心不安でいっぱいだった。

 レース前日、先輩たちは比較的リラックスしているようである。でもそれは、私が表面的にしか見えてないものであり、もしかしたら先輩たちの心の中ではいろんな想いが交錯しているのかもしれない。マネージャーが選手たちにミサンガや思い出の写真が詰まったアルバムなどを送る。嬉しそうである。選手たちの士気は一気に高まる。逃れられない運命とは残酷なものであるが、しかしそれは時として戦う戦士たちの心が一つになってこそ、戦場へ向かう姿が輝き、闘志みなぎる空間が作られ、戦士たちはまるで宴をしてるかのような、安心感と笑顔で溢れる。私はその一途さを見たのだった。

 レース当日、波が激しかった前日と比べると波は非常に落ち着いている。先輩たちは手慣れた様子で着々と準備を進める。やはりここにも笑顔がある。予選は通って当たり前と思ってる人、予選を通るためにこのレースに懸けている人、様々であるが、みんな笑顔を振りまいて、レースを楽しもうとしているのがわかる。「みんなでインカレ目指そう」、選手たちは一つになっていた。

 応援団からのエールをもらい、スイムがスタートした。私たちは第2ウェーブでのスタートである。選手たちが入り乱れる。私は開始早々に他の選手から足を掴まれる。とても苦しい。場所取りの肉弾戦である。第一ウェーブの人たちが前にいるため、その間を抜けていかなければならない。前半でかなりの体力を消耗してしまうが、後半は人が少なくなり、楽である。私はスイムアップした。複数名の先輩たちが前に見えた。

 バイクがスタートした。去年とはコースが変わったようであるが、それでもアップダウンが多いのには変わりない。息が上がる。私は登りに自信があったが、スイムの疲れもあってか、非常に体が重く感じる。筋肉をなるべく使わないようにケイデンスを上げる。心拍が上がる。ケイデンスを下げる。再び上げる。その繰り返し。一定のリズムが取れない。焦る。私は、ここで冷静さを失った。

 ランスタート。インカレに出場するにはボーダーラインまであと3分。気持ちの持ちよう気合いで頑張る精神で走る。登り坂。足が回らない。重い。どんどん遅くなる。抜かされる。先輩たちは速い。食らいつこうと必死に走るが、いかん戦乱が遅い自分にとって上りが地獄でしかなかった。

「これが、七ヶ浜か」

 ゴール。インカレ出場には程遠い記録であった。周りではインカレ出場が決まって喜ぶ先輩たちの姿がある。おめでとうございますなんて軽い口調で言うことなどできなかった。情けなかった。悔しかった。先輩たちの距離がまだまだ遠く感じられた。自分は低いところにいる。こっからあがいで、もがいて、どうしても先輩たちに近づきたい。そう思った。七ヶ浜で自分の実力を知り、七ヶ浜で自分への目標が浮かんだ。

「強くなる」と。

 

文責:西塔心路

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