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とんスポ

199号:彩湖道満トライアスロンATCカップ

彩湖道満トライアスロンATCカップ

おそらくこのATCに関する記事を書くのは2回目。「ATCといえば西塔」みたいな風潮になるのは、果たして喜ばしいことなのだろうか。そんな疑問を抱きつつ、私は筆をとる。
  今年も暑い夏がやってきた。夏といえばATC。日本中のマゾヒストが集結すると言っても過言ではない、非常に過酷なレースである。Swim:1500m、Bike:82km、Run:23.45km。ミドルの距離としては少々雑な面もあるが、これはこれでマゾが喜ぶのには十分な距離である。
  今回の遠征メンバーは皆個性が強く、ハイエースの中は仙台から彩湖まで終始盛り上がっていた。皆、「インスタグラム」と呼ばれるSNSにハマっているようであったが、写真を撮る習慣がない私は興味がなかった。ただ、インスタグラムを通してこれほど盛り上がれるのであれば、皆ハマり出すのもわかる気がする。単純である。皆さんもやってみてはいかがだろうか? 私は、やらない。
  関東地方に入ると、じめっと湿った空気が身体中を覆い、嫌な感触だった。気温はそれほど高くないが、湿度がものすごく高い。ただでさえ汗っかきな私は、滝のような汗をかいた。
  試走。風が強い。日差しも強い。彩湖の水位は比較的高く、当日は無事トライアスロンができそうである。一昨年は水位が足りなく、デュアスロンになったのだ。彩湖は今日も、綺麗なエメラルドグリーンを輝かせていた。
  当日。OBの方たちと合流した。折角の休みをATCに捧げるなんて、皆さん本当にトライアスロンが好きなのだなと感心してしまった。結局、皆マゾなのかもしれない。
  Swimがスタートした。ウェットスーツを着るのに手間取った私は、アップなし、右手がウェットスーツに引っ張られてつっぱった状態で泳ぎだした。Sっ気たっぷりのオフィシャルは決して待ってはくれない。彩湖の抹茶ラテは、あるところでは冷たく、あるところでは生温かく、四季折々のブレンドを味わった。
  Bikeは遠藤(B4)が1位でスタートした。さすが、去年のチャンピオンである。そんな筆者は2位でスタートしたのだが、第1折り返し地点でクランクをへし折ってしまった。自分のバイクには乗れなくなったため、このままDNFを考えたが、OBの瑞樹さんがTTバイクを貸してくださったため、そのまま競技を続行することにした。この時点で、他人のバイクを使ったことでオープン参加となってしまったが、それでも頑張って走れちゃうのがATCの魅力である。結局、ここで私のマゾが解放されたのである。
  Runがスタート。ここまでくるとさすがに身体が応える。OBの方たちも次々とDNFを選択している。英断である。なぜなら、当日の気温は35℃を超える猛暑日。完走するだけでもはや勇者である。そんな過酷なレースを現役生・OB合わせて6人ほど完走することができた!筆者もその内の一人だが、こんなに嬉しいことはない。最後はみんな笑顔でレースを終えた。
  レース前、同期に「一体何をめざしているの?」とあきれられた。だが未知のレースがあれば、自分の力を試したくなるのがワイルドレースに挑む者の心理だ。自らを苦しめるのが好きな「マゾヒスト」とも呼べるが、自分という人間の限界がどこにあるのか興味が尽きない、ともいえる。レース前は「そんなの無理」、レース中は「やめたい」と思いつつ、どこかでその壁を突破する自分の可能性に期待してしまうのだ。こうして1つ壁を越え、私たちは「彩湖の風」になった。

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