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とんスポ

187号:カーフマン南関東デュアスロン

2017年 10月 3日 発行

カーフマン南関東
 大学が冬休みに入ろうとしているとき、僕の南関東に向けた練習が始まった。
 冬場のとても寒い時期。手がかじかむ。足は震える。容赦なく雪が降っていた。普通ならば練習中止になるような天気のときでも、僕は走ると決めていた。
 最初の1stラン5kmを18分切る。そのことだけを考えて走った。どんな練習が一番効率的かなんて正直分からなかった。ただ量だけをこなしていた。とにかく走った。シューズはボロボロになっていた。
 大会前日、ハイエースで先輩や同期と会場へ移動した。会場は横浜にあるごく普通の公園。ここが戦いの舞台となることは想像ができなかった。
 先輩たちと一緒に試走した。ランでスピードを上げるが、すぐに息が切れてしまう。身体に疲れが残っているのを感じた。ケア不足だったと後で反省した。明日が不安で仕様が無かった。18分を切れそうになかった。
 大会当日、豪華な顔ぶれが軒を連ねる。走るフォームが綺麗だった。軽やかだった。フォアフットで走る選手、ストライドが大きい選手。そのオーラやプレッシャーは異様な感じだった。自分より遅い選手など存在しないように感じた。
 注目選手が紹介されてまもなく、スタート位置へと走った。ポジション取りで激しくもまれ、後方へ追い出された。すでに勝負は始まっていた。
 スタートの号砲が鳴る。一番前の列に並んでいた有名選手たちはスタートダッシュを決めている。僕は、とにかく上げすぎず、かつ集団に入れるスピードで走り始めた。2kmくらいたつと、突然呼吸が苦しくなってきた。集団から遅れをとる。後ろを走る選手はほんのわずかしかいない。焦る。パックが形成できないかもしれない。しかし、あきらめるわけにはいかない。今までの練習を無駄にするわけにはいかない。僕は、無我夢中で、限界を迎えるまで走った。
 トランジットまで走りきり、バイクに飛び乗った。急ぐ。すぐ前の集団に追いつくことができた。みんなガタイがよく、いかにもバイカーといった風貌だった。どうやら機能するパックに入れたようだ。
 走っているうちに呼吸が落ち着いてきて、足も軽くなってきた。43km/h巡航。前の選手たちをどんどん回収いていく。先頭で集団を引っ張る。楽しい。自然と笑みがこぼれる。
 なんとかカットされずに済んだ。トランジットに移る。「走れる!」と思った。初めて。自分の前を走る人たちを抜かしていくのがこんなに心地よいとは思わなかった。
 ランの後半は、やはりしんどかったが、先輩や他大の人から応援してもらったおかげで、ゴールまで走ることができた。スプリントのときに一緒に走った先輩と再び握手を交わした。この瞬間が一番好き。走る前は敵同士でも、走り終えた後はともに競い合った仲間になれる瞬間が。結局、チャンピオンシップにいけるような結果ではなかったが、目標であった1stラン18分切りは達成することができた。やりきった。努力が結果として出るのは本当にうれしかった。またこれからも頑張ろう、そう思えたのだった。  

文書:西塔心路

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