top of page

とんスポ

190号:七ヶ浜東北学生選手権

2017年 10月 3日 発行

 7月2日に行われたみやぎ国際トライアスロン仙台ベイ七ヶ浜大会は、インカレへの出場権がかかった大会である。私としては初めてのオリンピックディスタンスの大会となるので、完走できるのかという不安と、自分はいったいどのようなレースをし、トライアスロンにどのような楽しみを見出せるのかという期待とで胸がいっぱいだった。
  当日は晴れて日差しがきつかった。私はレース準備に戸惑った。ゼッケンが破れたり、トランジットエリアから戻る時用のシューズを忘れたりと、これからレースに臨む選手としては話にならない常態であった。それに対し先輩方はスムーズに準備を終え、これから始まるレースに備え、各々リラックスしているように見える。アップも十分に行えないまま私は浜へ向かった。応援団の方々からエールをもらい、円陣を組むと私の士気は一気に高まった。「もうやるしかない、今の時点でやれるところまで全力を出そう」と。
  ついにレースがスタートした。まずはスイムだ。出だしは順調。スイムが得意な私は、第2ウェーブの集団から抜け出し、早く第1ウェーブに追いつこうとペースを上げた。「防波堤を超えると波が激しくなる」。そう言っていた先輩方の言うとおり、防波堤を超えると進んでいる感じがしなくなった。しかし、近くに私と同じ色のキャップを被っている選手が見受けられたので、その選手達を一人一人抜いて行こうというモチベーションで泳いだ。スイムアップは2位。前を泳いでいた一馬さんはもう見えない。圧倒的な速さだった。私はトランジットで手間取り、バイク乗車レーンを超える時には数名の選手に抜かされていた。「ここでもやはり差が出るのか」と、トランジットをいかに速くこなすのかの重要さを痛感した。
  その後のバイクはとにかく苦痛でしかなかった。開始早々腰が痛み出し、「このペースで40kmも走りきれるのか」と心が折れそうになった。さらに、バイク入りがそこそこの順位だっただけに、バイクでは後ろの選手達にどんどん抜かされる。ここでも精神的な辛さがあった。コースはアップダウンが激しく一定のペースでは走れない。ターンの時に、すぐ後ろに同期の田中聡が見えたのでかなり焦る。平地も風の影響でなかなか進まない。このような形でバイクは悲惨なものとなり、かなり順位を落とすこととなった。先輩方はやはり今までの練習量と経験の差なのだろうか、バイクは驚くほど速かった。あれだけバイクで前の選手を抜かせたら爽快だろうなと思った。
  ランの出だしは辛いものであった。バイクで脚を使い過ぎたせいか、脚が全く動かない。さらに横腹も痛くなり、今度こそ本当にレースの完走は難しいかもしれないと感じた。しかし、走っているうちに足は思いの外動くようになり、横腹の痛みもなくなり走りが軽やかになった。次第に「いける、もっとペースを上げて前の選手達を抜いていこう」という気持ちになり、出来る限るのペースで走った。このとき、応援の方々の声援は本当に力になった。コースの様々な場所で応援をしてくださったおかげで、集中力を切らすことなく走ることができた。
  ゴールラインを超えたときは、正直タイムや順位のことよりも完走したことによる達成感でいっぱいだった。インカレへの枠を意識し、悔しさが出てきたのはリザルトを見たときだった。「バイクがもっと速ければインカレにもしかしたら出れていたのか」。そんな気持ちが湧き上がってきた。しかし私はこうも思った。「今年はこれでいい」と。もし今年このタイムでインカレに出ていても話にならなかったに違いない。それなら一年間バイクやランを徹底的に磨いて、来年の七ヶ浜でこの悔しさを晴らしてやろうと。インカレ出場が決まった選手達は嬉しそうである。私も来年はその一人になろうと強く思った。

​文責:川崎 湧至

bottom of page